公開日: 最終更新日:2018/10/15

可視光通信協会(VLCA)春山会長に聞く【後編】 

~世界における可視光通信研究とこれから~

2014年5月発足の一般社団法人 可視光通信協会。【前編】では、春山会長と鈴木事務局長に、可視光通信協会発足の経緯や、可視光通信の特徴を活かした技術開発のお話を伺いました。後編では、研究者でもある春山会長に、世界や大学での可視光通信の研究と今後の展望について伺います。 IMG_2193

●国際的な研究活動

可視光通信を国家予算で研究しているのがアメリカです。ボストン大学、レンスラーポリテクニック、ニューメキシコ大学、関連企業が数十社集まり、アメリカ国立科学財団 (National Science FoundationNSF) のファンドを使って、10年プロジェクトが進められています。ここではLEDを使った健康への応用や、照明自体の研究などが包括的に行われていて、可視光通信もそのほんの一部ですが、研究が進められています。 ヨーロッパでは、ライファイ(LIFI)コンソーシアムがあります。赤外も含めた可視光・赤外通信でより高速な通信技術を研究する目的で創設されたようです。ただ、最近はあまり話を聞かないので、実際の研究活動についてはわかりません。 オックスフォード大学をはじめとしたいくつかの大学で、高速な可視光通信、赤外線通信を研究している教授もいます。研究所としては、フランフォーファー研究所が、かなり高速な可視光通信に成功、ギガBPS以上のスピードを達成したと発表しました。イタリアや中国の研究所も、高速通信達成の発表をしています。ただ、いずれも測定条件が統一されているわけではなく、発表が本当に実用に耐え得るのかは、論文からはわかりかねるところです。

●大学の研究の今

可視光通信協会は、ビジネスにつなげるための共通のプラットフォームや、共通の何かを参加企業のメンバーで話し合う場です。一方、私が勤める慶応大学の研究室では、とにかく可視光でできる新しいことを研究しています。特に、イメージセンサーを使った研究は、他の通信技術との差別化ができるのでとても多いです。測量やロボット制御など、電波は無理だけれど可視光なら成立する場所での実証実験を重ねています。研究室では、可視光通信ならではのマーケットなり、アプリなりを考える姿勢をずっと貫いていて、他の通信技術との差別化となるところを追求しています。 可視光の必要性がないところで、可視光を使う研究はあえてやりませんが、高速化に関しては、新幹線と地上間での通信を赤外線レーザーでやっています。これは鉄道総合技術研究所との共同研究で、成果が出ています。 また、位置情報も研究テーマの一つです。地図情報は、現在グーグルマップをはじめとして、インターネット上ではかなり整備されています。でも、屋内のフロアプラン、マップの情報はほとんどない。こうした研究もやっています。

●可視光通信協会として進めていきたいこと

協会は、いろいろな企業が集まっているので、みんなで協力してやらなければいけないことをやろうと思っています。たとえば、プラットフォームのような共通の基盤作りや、規格の整備や標準化なども課題です。 標準化に関しては、すでにIECやJEITAでやっており、協会としてはそれをベースにサポートをやっていきたいと思っています。今の標準化は非常に低速で、位置情報を送るくらいのことしかできません。参加企業が目指すことを明確にしたうえで雰囲気が盛り上がってくれば、別の標準化への取り組みも当然出てくると予想しています。 現在協会には、メーカーなどハードウエア系の企業が多いのですが、ソフトウエア系、サービス系など、まったく異なる業界の会社にも参加して欲しいと思っています。違う視点で、さまざまな角度から仕組みを作っていく必要があるからです。 可視光協会の目指すところや可視光通信研究の今について、大変貴重なお話を伺えました。可視光通信が。世の中の便利なツールとして実用化される日を楽しみにしています。可視光通信協会が発表される情報は、今後カシケンでもフォローさせていただきます。このたびはありがとうございました。 IMG_2201 (左:春山真一郎様 一般社団法人可視光通信協会会長・慶應義塾大学大学院教授・理学博士 右:鈴木修司様 一般社団法人可視光通信協会事務局長 中央:寿田龍人 カシケン運営・聞き手)

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