日本の可視光通信はこの人から始まった! 慶応義塾大学名誉教授 工学博士 中川正雄氏インタビュー【Vol.2】

公開日:  最終更新日:2016/04/29

日本の可視光通信を牽引し続ける、慶応義塾大学名誉教授 工学博士の中川正雄先生へのインタビュー。第1回目(日本の可視光通信はこの人から始まった! 慶応義塾大学名誉教授 工学博士 中川正雄氏インタビュー【Vol.1】)は、可視光通信に至るまでの先生のご研究と経験について伺いました。第2回目となる今回は、通信の専門家である先生の目から見る日本の産業界とネットワーク事情についてお話を伺います。(4回シリーズ) IMG_0297(左)慶應義塾大学名誉教授 工学博士 IEEEフェロー (社)可視光通信協会 理事 中川正雄氏  (右)寿田龍人 カシケン運営・聞き手

to(ネットワーク)はまだまだ発展途上

私の専門の通信は、人と人を繋いだ時代から、要素技術を繋ぎ合わせる時代、すなわちM2M(Machine to Machine)に移行しています。機械と機械がネットワークを介して情報を送受信し、自律的に動作、制御をおこなうシステムが、続々と世の中に導入されています。機器(M)はどんどん多様化され進化していますが、ネットワーク(to)はどうでしょう? 結局のところ、既存の通信網を利用するしかない状況です。 たとえば、ビッグデータやIoTなどの流れを見ると、センサーが非常に多様化、高度化しています。でも、センサーネットワークに特化した専用網をどこかが作るかといえば、そうでもない。これでは日本の最先端技術でもある、センサーのデバイスとしての能力を、最大限活かせずに終わってしまいます。優秀なロボット技術もそうです。これからはロボット全盛時代が来ると思われますが、ネットワークが繋がりにくい、限定的というのでは活かされません。アメリカなどは、軍用目的で研究開発が進みますから、ロボット産業もインターネットの時のように、民間移転された時点で急速に発展するでしょう。 つまり、今の日本はM 2(to) Mの「M」はあるが「to」がないというのが現状なのです。どうしてこういうことになるかというと、一言でいえば「視野が狭い」から。部分だけに着目しているからでしょう。自分の専門にはめっぽう詳しいけれど、関連する周囲には興味がないしわからない、グランドデザインも見えないし見ようとしない。全体をまとめる人もいません。日本の素晴らしい技術を活かすためにも、通信に関わる分野の人たちの専門性に加え、幅広い知識や人的なネットワーク開発が必要だと思います。 これは教育にも責任があります。要するに「教養」がない。教養は、自分でものを考えるための基礎体力になりますが、大学が専門性を強化するあまり、教養を学ぶ機会を多く提供していないことも問題です。教養は、人と人とをつなぐネットワークになりますから、とても重要なんです。 IMG_0289

便利優先の価値観を変える

「便利」を追求するのが産業であり発展、という価値観は変えた方がいい。便利さってなんだろう、人間の生活とは何か、ということを深く考えた方がいいですね。このような哲学的思考はすごく大事です。 昔とは生きるうえでのモチベーションが変わっています。立身出世とかお金が欲しいとかハングリーとかそういうことではなくて、仲間が欲しい、自分を表現したい、気が合う人たちが共通の目的を持って何かを成したい、と、レベルが上がっているんですね。 エンジニアは、レベルの高い社会を目指すことを、価値観として持っていた方がいいんです。僕は1980年代後半から90年代のカリフォルニアで、それをまざまざと目にしました。やはりすごいな、と思いますよ。スティーブジョブスのような人たちは、こうした環境から出たんだ、と。 IMG_0290

専門と教養とコミュニケーション

欧米の大学では専門を学ぶ人が多く、その人たちがネットワークを築いています。前回話したクアルコムのように、専門性の高い人が集まってわーっと議論してわーっと決めていく。移動通信も、さまざまな分野の専門家がいないとダメです。デバイス、ネットワーク、コンピュータ、それぞれの専門家が全部揃ってディスカッションできる環境がないと複雑だから前に進みません。そうしないとちゃんとした売れるものができない。 そして、自分がこの集団ではどの位置にあり、どういう流れでこうなっているからこういくはずだという全体を俯瞰した中で、自分が関わる専門性について説明ができないと。結局はチームワークです。専門を持ちコミュニケーションが取れる人であるということが重要なんです。 専門は大切です。専門性を崩して「広く」してしまうと、何をやっているんだかわからない人に育ってしまいます。専門性を持ちながら、他の人のやっていることにも少し興味を持つといった「教養」が、人的ネットワークにつながっていきます。 可視光通信もそう。そのため、僕らはそういう場を作ろうと、2003年に可視光通信コンソーシアムを発足し、さまざまな専門技術を持つ企業とともに研究を進めてきたわけです。 (中川氏 談)

日本は、個々の専門性は高いけれど、それらをつなぐネットワークが弱い。ネットワークのベースとなるのは「教養」。一社会人としてうなづける有益なお話を伺いました。
次回はいよいよ、中川先生に可視光通信について語っていただきます。
日本の可視光通信はこの人から始まった! 慶応義塾大学名誉教授 工学博士 中川正雄氏インタビュー【Vol.3】  

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