公開日: 最終更新日:2018/10/15

一つ一つの光が意味をもつ時代へ パナソニックの『光ID技術』 パナソニック 光ID技術開発者インタビュー【Vol.4】

「光ID」の生みの親である、パナソニック株式会社 AVCネットワークス社のスーパーバイザー(技術顧問)大嶋光昭様へのインタビューもいよいよ最終回。大嶋氏は、これまでもパナソニックの大ヒット商品に関わる特許技術の開発を、数多く手掛けられています。今回は光IDを生み出すことになった大嶋氏が主宰される「大嶋塾」と、その大嶋塾の土壌となったパナソニックの研究開発文化とについてお話を伺います。

人の育成は技術そのものよりも重要
Wonder LAB Osaka

パナソニックは、2018年に創業100周年を迎えます。ここに向けてグループ各社の変革を促そうと、我々は「Wonders!」のキーワードのもと、いろいろな取り組みを行っていますが、そのひとつが西門真※注1の「Wonder LAB Osaka」です。

そもそも、パナソニックには創発を応援する社風があります。が、パナソニックの幹部が最近よく言うのは、「重要なのは技術そのものではなくやはり人の育成だ」ということ。そのためには、企業文化を変える必要があります。企業文化を変えるのに、組織ではなく「入れ物」を変えようという発想で生まれたのが、「Wonder LAB Osaka」です。
いくら組織図をあれこれいじって書いてみても、組織は実は変わらない、変わった例はありません。そこでウチの研究部門が大英断して、先端研究本部の建物をダイナミックに変えたんです。器を変えた、空間を変えた、もう山小屋みたいです。門真の雰囲気は、がらりと変わりましたよ。床が温かみのある木になっていました。機能面でいったら汚れやすい木を使うなんて…と思いますが、これだけでも雰囲気がずいぶん違う。広々と開放的な空間で、カフェやキッチンまであるんです。若い人たちが遊べるような環境というか、いろいろな立場の人たちが気軽に集まりやすい場所を作ったんですね。

机に向かってうんうん唸りながら何かを生み出すのではなく、違う環境で様々な経験をしてきた人が集まって、自由闊達な意見交換の中からアイディアが生まれていくイメージです。シリコンバレーの企業のようです。ここでは、ベンチャー企業のリーダーを招いて講演をしてもらったり、他社の展示会に場所を提供したりと、今までにない取り組みで社内の風通しを良くしています。パナソニックの文化が変わろうとしていることを、肌で感じます。機会があったら、ぜひ訪れていただきたい場所です。

※西門真:パナソニック株式会社 先端研究本部 西門真地区を指す
大阪府門真市大字門真1006

平均26歳の大嶋塾

人の育成という面では、私自身も意識的に次代を担う研究者を育てようと腐心してきました。そのひとつの活動が、私がパナソニック社内で主催する発明塾「大嶋塾」です。今まで40人ほどが参加しました。今日、同席してくれている主任技師の中西幸司さんもその一人で、2,3年前に参加したメンバーです。

大嶋塾

メンバーには、だいたい26歳くらいの研究員を、毎回10名程度集めてやっています。26歳といえば、大学院を出て2年目くらいの人ばかりです。社会の常識などにまだとらわれていないので、素直なんですね。素直じゃないと議論が進まない。反発はもちろんいいんです。いいんだけれど、すすっと進まずに議論が止まってうまくいかないことが、経験上多かった。だから26歳くらいの人をメンバーにしています。

成果が出る出ないは別に、私がこれまでに得た経験や研究に対する考え方、アイディアの展開などのノウハウを、若い人たちの研究の参考にしてほしい、パナソニックのイノベーションに役立ててほしいという思いから活動しています。彼らと話をするのは私にとって大きな刺激になりますし、「大嶋塾」を通じて新たな視点が生まれるのはとても楽しい。できる限り続けていきたいと考えています。(大嶋氏談)

 

登録特許件数は海外特許を含めると1,300件以上、パナソニックの屋台骨を支えてきた数々の技術の生みの親であり、日本有数の発明家である大嶋氏へのインタビュー。聞き手は大変緊張しておりましたが、大嶋氏の屈託のない笑顔と関西弁で語られる痛快なお話に、すっかり緊張もほぐれました。

大嶋氏は技術者、発明家である一方、パナソニックの企業人として長きにわたり会社の経営を見ていらっしゃいます。振動ジャイロや手ぶれ補正技術の発明では、未知の技術に対する理解がなかなか得られず、研究開発費の獲得や事業化に大変苦労されたと言います。様々な経験の中で得た、企業における「研究・開発」の在るべき姿。こうしたことも含めて、「大嶋塾」を通じ知見を後輩に伝授していこうとされているのだと感じました。

光IDの活用イメージは、カシケンが描く可視光通信の社会的な活用イメージと重なる部分が非常に多く、その普及に向けて一役買いたいと強く感じました。今後も情報交換を重ねていければ幸甚です。

大嶋様、中西様、取材をアレンジしてくださった前田様、どうもありがとうございました。

パナソニック

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