日本の可視光通信はこの人から始まった! 慶応義塾大学名誉教授 工学博士 中川正雄氏インタビュー【Vol.3】

公開日:  最終更新日:2016/04/29

可視光通信を語る時、慶応義塾大学名誉教授の中川正雄先生のお名前を聞かないことはありません。日本の可視光通信を常にリードされてきた中川先生へのインタビューシリーズの3回目は、中川先生が可視光通信に着目するきっかけとなったお話と、今話題の機器への活用アイディアについて伺いました。(4回シリーズ) IMG_0299(左)慶應義塾大学名誉教授 工学博士 IEEEフェロー (社)可視光通信協会 理事 中川正雄氏  (右)寿田龍人 カシケン運営・聞き手

可視光通信研究、きっかけは出会いがしらの事故?

可視光通信を意識したきっかけの一つが、「自動制御」に使えないかどうかということでした。僕は以前、出会いがしらの衝突事故に巻き込まれたことがあるんです。相手が一時停車をミスして、僕の車の側面に突っ込んできて、車軸が曲がって、即、廃車になりました。こういう出会いがしらの事故を防ぐ方法はないものか、と考えて、最初に思いついたのは各車にGPSを付けて障害物を感知するアイディア。実験もやりましたが、GPSの精度などの問題から、100回に1回の間違いも許されない制御機能に無線は不向きだな、と認識しました。 そんな時、信号機がLED化するという話を日経エレクトロニクスの記事で読みました。LEDは高速点滅しているからそこにデータを入れて発信し、こちらはカメラで受信して通信すれば、無線のように間接的ではなくダイレクトなやり取りになるから、間違いないんじゃないか、って思ったんですね。そこからLEDを使った通信について、研究を進めていったんです。

可視光通信の良さってシンプルですよ。今あるものにプラスαすればできますし、性能は高いし、納得性がある。電波の場合、今、インターネット上でハッカーがすごいことになっていますが、今後電波ハッカーも出てくると思います。有線の方から締め出されると間違いなく無線の方に流れてくる。制御系のリアルタイムハッカーって一番怖いんです。対策もどんどん複雑化し難しくなってくるでしょう。可視光は指向性があり、意図的に情報を取りに行くことで通信が成立します。通信が「見える」ことの信頼性は、無視できないと思います。 IMG_0291

人の感性との親和性が可視光通信の大きな特徴

百聞は一見にしかずという格言があります。英語では「Seeing is believing」といいますが、見ることは信じること、見ればすぐにわかるよ、ということです。視覚情報は100回聞くよりも圧倒的に認識力がある、対象物と発信物が一致していて、そこに情報を埋め込むので情報がずれることはありません。 可視光通信は人間工学的なところがあります。人が今まで生活の中で慣れ親しんでいる信号機、照明、表示看板などが、目に見える形で誤りなく情報を伝えるわけです。「目で見てそれが何かと直感として認識する」人間の認識プロセスと似ているんです。今の生活に無理なく自然に導入できること、人の感覚との親和性が高いから間違いが起こりにくいことは、可視光通信の利点と言えるでしょう。 さらに利点をあげるならば、通信はインフラを整えるのがすごく大変なんです。お金も時間もものすごくかかる。だから、すでに照明器具として普及しているLEDを通信のインフラとして活用できるなら、これを利用しない手はありません。

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あの機器に可視光通信を活用?

実は、最近公的機関に提案していることがあるんです。今話題のドローンです。警察や消防のドローンに、パトカーと同様の赤色灯を付けて、それに通信機能を付加するアイディアです。 歴史は繰り返されるといいますが、自動車も無線も、出てきた当初は使える人が自由に使っていた。でも使える人が増えてくれば、免許や登録といった規制が入ります。ドローンも近い将来、同じ道をたどるでしょう。ドローンのIDに、LEDが使えるんじゃないかと思っているんです。 ドローンの機能を使って、災害現場やトンネルなどの監視、画像センシングなど、警察が利用するはずです。そういうものが現場を複数機飛び回った時に、あれは警察、あれは消防、あれは報道、とわからないとまずいじゃないですか。LEDは色が使えますし、遠くからもパっと見て認識できます。そこに詳細情報を埋め込んでおけば良いわけで、受信側はスマホのカメラで十分です。また救出用とか監視用に使うのであれば、カメラでとらえたものと位置情報が一致しないといけません。これはGPSや無線だと結構難しいのです。可視光通信であれば、位置情報と撮影情報がずれることなく記録できます。 LEDは安くて軽くて省エネで長持ちしますから、高額な開発費なども不要です。率先して国とか県とか自治体が使えばそのあとどんどん民間のものになるので、実現してほしいなぁ、と願っているところです。 (中川氏 談)

次回(最終回)は、可視光通信技術が商用でどのように活かされていくか、現状と将来の展望について伺います。

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