台湾工業技術研究院(ITRI)研究員に聞く! 【後編】 ~台湾における最先端可視光通信研究動向~

公開日:  最終更新日:2017/03/24

ITRI(財団法人工業技術研究院 Industrial Technology Research Institute of Taiwan, R.O.C) へのインタビュー【前編】では、ITRIのMISSIONと可視光通信研究に取り組むきっかけ、そして現在実証実験に入っている事業についてお話していただきました。後編では、2017年以降予定されているトライアルと今後の展望について伺います。
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2016年12月 加賀電子への表敬訪問時のITRIのみなさん

電波はNG でも無線通信は必要!

カシケン:前編では、病院内で現在進められているトライアルについてお話いただきましたが、やはりWiFiなどの電波を嫌う場所での通信利用を想定した開発が進められているのでしょうか?

劉氏:今年(2017年)、実証実験を予定しているプロジェクトが2つあります。一つは、台湾のある工場でのトライアルです。RF通信(電波などの周波数帯域での通信)ができない工場内の環境ですが、作業の正確性の担保や効率化のために、はやりブロードバンドのニーズがあります。これはCMOSイメージセンサでキャッチして云々という方法とは全く別次元の話になります。今準備しているのは、LEDとフォトダイオードでの通信です。スペックとしては、2mで20Mbpsを達成しており、アップリンクは可視光線でダウンリンクは赤外線で通信しようというものです。

ITRI

台湾のITRIとテレビ会議を通じてインタビューするカシケン運営担当

劉氏:もう一つは、水中における可視光通信です。水中可視光通信には技術的に難しい課題が多くあります。そもそものハードルが高い研究です。しかし、ITRIとしては国の産業発展のため、企業の競争力にこの水中可視光通信は有効だと考えています。

日本もそうですが、台湾も海に囲まれた島国です。こうした風土の特性に合わせた産業を育成していきたいのです。2017年の夏をターゲットに、台湾の北側にあり有名な観光地の一つでもある「野柳(やりゅう)」の海岸で、水中可視光通信の実証実験に取り組む予定です。これは海中の生態観察のためのシステムになります。

水中可視光通信

水中可視光通信イメージ

技術移管のスケジュールは?

カシケン:こうしたITRI独自の可視光通信の研究成果を民間に移管していくわけですね?

劉氏:はい。すでに、会議室内のネットワークシステム構築企業に、技術移管しました。また、照明メーカーとの技術提携、共同研究を進めています。前編でお話した病院でのトライアルのように、様々な場面での実証実験を重ねて、今は経験を積んでいます。最終的には、自分たち自身でモジュールを開発することも目指しています。

可視光通信は、産業界からの期待も大きいのですが、政府、大学、我々のような研究機関が、異なった4つの力を合わせて協力しながら、技術開発を進めています。実際、ITRIに可視光通信事業について打診してきている企業も何社かあります。ただし、そのほとんどが、WiFiとの関連や代替への可能性について聞いてきます。これは日本も同じだと思いますが、可視光通信の技術に可能性を感じ興味があるようです。しかし、実際どこで使うのか、どのようなシーンで使うのか、となるとなかなか前に進んでいきません。

先程ご紹介した、電波などでの無線通信ができない工場のように、特殊な環境の中での可視光通信は有効です。WiFiとの共存やWiFiを補完するものととらえると、ひとつの産業になるためにはある程度の規模の量が必要です。その点で、屋内で活用することを前提に、室内照明を利用したインフラについてどうなのかという議論も進んでいます。また、私たちが水中可視光通信に取り組んでいるのは、水中は他のブロードバンド技術が少なく、今後の成長が見込めると思っているからなのです。

カシケン:小型で高速のモジュール化を、ぜひ期待したいです。特に、100Mbpsクラスの高速通信ができる、小型で双方向通信が可能なモジュールは、コンシューマというよりFA産業機器で望まれている声は聞きます。

劉氏:Up&Down双方向ですか? 理論上はできると思います。ただ、これもニーズの問題で、ある程度量が見込めれば研究も前進すると思います。

カシケン:受信側のフォトダイオード開発は考えていませんか? 量を見込めるとすると、コンシューマ向けにCMOSイメージセンサ、すなわちスマホのカメラでの受信用途が現実的かもしれませんが。

劉氏:実はやっています。スマートフォンの中にフォトダイオードを組み込むのは可能性として低いですから、付属のカメラ、すなわちCMOSイメージセンサを使った可視光通信の可能性は高いです。ただ、病院や工場などは、デバイスがスマートフォンではありませんから、フォトダイオードの技術が必要になります。水中可視光も、光IDの部分はCMOSイメージセンサを使い、ブロードバンドの部分はフォトダイオードを使います。

今後の展望とカシケンへの期待

カシケン:ITRIの可視光通信に対する今後の展望をお聞かせください。

劉氏:やはり、ブロードバンドや水中通信における可視光通信の技術開発を進めていくことになります。国内産業の育成やスタートアップの育成を、技術移管やスピンオフで盛り上げていきたいです。台湾では可視光通信の産業はまだまだこれからというところです。過去、TSMC(半導体メーカー)の立ち上げが台湾のIC産業の隆盛につながったように、マーケットも含めて創造していくのが私たちの使命ですから。

カシケン:カシケンに期待することがあればお聞かせください。

劉氏:私たちも可視光通信を手掛けてから4年が経過しました。当初はLEDの普及に伴い可視光通信分野も拡がっていくと予想していましたが、実際は足踏みしているように感じます。やはりまだまだ可視光ならではの利用用途、メリットが知識として広がっていないのだと思います。カシケンにはその部分を担ってほしいと思います。産業界全体に可視光通信技術の可能性を広めていく活動を期待します。

 

ITRIの可視光通信開発への取り組みについて、直接お話を伺う貴重な機会を得て、有意義な時間となりました。カシケンとして、担った役割を果たしていきたいと改めて強く思いました。インタビューに快く応じてくださった劉様はじめ何様、お二人の陳女史、ありがとうございました。陳雅琪には、特に逐次通訳という大変なお役目を担っていただき、心より感謝申し上げます。また、テレビ会議のアレンジにご尽力くださった日本事務所の施様、楊様もありがとうございました。これからもITRI発信の可視光通信情報に注目していきます!

ITRI JAPANOFFICE中央:ITRI日本事務所の施虹宇氏(アシスタントマネジャー) 右:同 楊萬昱氏  左:寿田龍人 カシケン運営・聞き手

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