公開日: 最終更新日:2018/10/15

光の中に人には見えないように情報を…富士通研のアプローチに見る可視光通信技術  株式会社富士通研究所 インタビュー【Vol.1】

2014年11月 株式会社富士通研究所が発表した、可視光通信を使った情報送信技術は、人の目には見えないように情報を光に埋め込み、スマートフォン(スマホ)を介して解析、表示することで、その情報を必要な人が受け取れるという仕組みです。すでにテレビショッピングなどで活用されている映像技術を応用しており、可視光通信が一般的な分野で実用化されるヒントがたくさんありそうです。さっそく富士通研究所に出向き、詳しいお話を伺いました(3回シリーズ) IMG_1845 右から 田中竜太様(株式会社富士通研究所 メディア処理研究所 リアルタイムメディア処理プロジェクト 主管研究員) 倉木健介様(同 メディア処理研究所 リアルタイムメディア処理プロジェクト) 武理一郎様 (同 ユビキタスシステム研究所 主席研究員) 寿田龍人 カシケン運営・聞き手

映像技術の応用として始まった富士通の可視光通信

私たちのチームは、メディア処理研究所という名称にもあるように、画像や音声の処理技術や、多言語翻訳をはじめとした言語処理技術などを専門に研究開発しています。 LEDを利用した可視光通信の情報送信技術の前に、私たちは、「映像」の中に情報を目に見えないように埋め込んで、スマホのカメラを使ってその映像から情報を取り出せるような、画像処理技術を開発してきました。映像も可視光の一種ですから、可視光(映像)の中に、人の目に気付きにくいように情報を入れて送信し、スマホのカメラでそれを受け取る技術を開発してきたとも言えます。 この技術は、2013年末に実用化されて、テレビショッピング番組で使われるようになりました。番組中にスマホをかざしていただくと、紹介された商品がお茶の間ですぐに買える・・・、つまり、「フリーダイヤルこちら」と書かれている番号に電話しなくても、スマホでピッとやるとその場で商品が注文できるというサービスです。視聴者にとっても便利ですし、情報提供側も自社サイトに誘導でき、販売機会の損失を防げますし、電話のオペレータの負担軽減にもなります。双方にとってメリットがある仕組みです。 映像コンテンツを少し加工して、色を少し変化させることで情報を映像の中に入れ、あとは放送していただくとその情報がテレビ画面から可視光として出る。それをスマホのカメラで検出、解析して情報を復元する、という使い方です。 この技術は適用範囲が非常に広く、画面があれば様々な場面に応用が可能です。デジタルサイネージ、テレビ放送、カーナビ、パソコンと連携してデータをやり取りする、など、いろいろな使い方ができるわけです。ただ、逆に言えば画面があるところにしか適用できません。そこで、画面という枠を取り払えないかと検討して、だったら「光」そのものでやってみてはどうかと、応用研究が始まりました。 LEDがRGBの3色で好きな色を出せることからLED照明、つまり光にも応用できるはずということで開発を進めたのが、昨年発表した可視光情報送信技術です。 IMG_1827

色の変化の波形を信号

原理は簡単に言うと、色の変化の波のパターンでデジタルの0-1を作り、スイッチングしながら、デジタル情報を照明の方から出します。それをスマホ側のカメラで受信し、解析して表示します。 反射光でも直接光でも構いません。反射光は特にそうなんですが、受信した際に色が実際とは少し変わるので、変色を補正しながらもともとの0-1信号を復元する技術が、受信側のアプリに入っています。 図 図では0をあらわす波が赤、1をあらわす波が青になっていますけれど、実際には赤と青の色で区別しているわけではなく、色変化の波形で0と1を表現しています。照明の色と上乗せする信号部分とは別ですから、いろいろな色に情報を乗せられるようになっています。 アプリをインストールしたスマホを対象物にかざすと、反射した光から情報を取ってきます。たとえば、商品に照明を当てておいて、商品の色のバリエーションやサイズの在庫チェックなど、忙しい店員さんを呼ばなくても知りたい情報がわかるような使い方ができるわけです。

互換性を重視

この方式では、1/30秒ごとに画像を撮っていって、時間経過とともに色がどのように変化していくかを解析して情報をやり取りしています。情報量を増やしていくことは継続的な研究課題ではありますが、私たちがこの方法を採用しているのには理由があります。1/30秒で光が出せて、カメラでそれが撮れさえすれば、確実に情報がやり取りできるという互換性、安定性を重視して開発してきているからなんです。 ですから、送信側はLED照明だけでなく家庭のTV、街中のデジタルサイネージ、PC画面など今ある様々な表示デバイスも使えますし、受信側のスマホはAndroidやiOSの新旧バージョンが広く使えます。デバイスは時代とともに方式や性能が変化していきますが、基本的に1/30秒で色が確実に撮れていけば、互換性が保たれます。新しい技術を普及させるにあたって、将来に向かって長く使っていけることも重要と考えて技術開発を進めています。(田中氏 談) IMG_1809 適用範囲の広い富士通方式の可視光通信技術。次回は、その利用用途について伺います。

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