ミレニアム企業へ。可視光通信技術の㈱三技協ラボツアーに参加しました
カシケンでもたびたびご紹介している株式会社三技協。2015年に創立50周年を迎え、ミレニアム企業を目指す観点から、通信の専門家として次世代通信の可能性を秘める可視光通信の普及にチャレンジされています。今回、LEDによる可視光通信の技術開発実際に利用されている実験設備などを見学できるラボツアーが実施されるということで、伺ってきました。
PIF・PN研・VLCA共催 チュートリアル講演会&先端企業ラボツアー
今回は、2017年11月21日(火)に開催された、PIF(超高速フォトニックネットワーク開発推進協議会)、PN研(フォトニックネットワーク研究会)、VLCA(一般社団法人可視光通信協会)共催の、チュートリアル講演会のプログラムの1つとして企画されたラボツアーでした。
三技協はVLCAメンバーですが、50周年を記念して新社屋『MIRAIMA』を新設。この場がチュートリアルに最適ということで講演会場に選ばれ、加えてその最先端技術が生まれる設備も見学させていただくという、参加者にとってはまたとない貴重な機会となりました。
チュートリアル講演は、ネットワーク系の2講演が行われました。
最初は、『サービスプロバイダ視点でのNETCONF/YANGの基礎』と題し、次世代の記述言語YANG (Yet Another Next Generation)のスタンダード化について。2本目は、『モバイルフロントホール技術の基礎と5G以後の進展 』と題し、巷でも騒がれ始めた5Gネットワークの実態が語られました。それぞれネットワーク企業の専門家により、基礎から最新技術までの興味深い内容でした。
チュートリアル講演の冒頭で、本企画の座長的存在である慶応義塾大学 理工学部の山中直明教授(PIF 企画部会長・VCLA理事)から、「この場に集まった人たちは、『知るために来た』のです。話がわからないのは講師側が悪い。皆さんにわかるように、講演をお願いしていますからわからないことはどんどん質問して」とのジャブで会場を和ませたことも奏功(?)し、2講演とも時間がオーバーするほど活発な質問が飛びかいました。
三技協のMIRAIMA
講演に続き、株式会社三技協 仙石泰一代表取締役社長により、企業概要とMIRAIMAについてのプレゼンテーションがありました。
新社屋MIRAIMAはその名の通り「未来を語る間」、これに対して旧社屋を「TADAIMA(ただいま・只今)」と呼ぶそうです。TADAIMAは、企業活動の“今”、準備に集中する職場であり、MIRAIMAは新しい50年に向け、新たなエネルギーを生み出すための「交流・創造・発信」の場として位置付けています。
仙石社長は3代目でいらっしゃいますが、初代(創立者)が満州鉄道で通信事業に携わってから、一貫して通信の専門家として、通信技術の発展と共に成長してこられました。その流れの中で、通信のプロとして、モバイルデータトラフィックの課題を解決する次世代通信として可視光通信の可能性に着目。電波を使わないLED高速通信「LED Backhaul(R)」の製品化に成功しました。144通りもの利用シーンを考え、それをベースに様々な企業とのアライアンスを進めています。
屋上の実験装置はフラウンフォーファの第1世代
さて、いよいよラボツアー開始です!
「LED Backhaul(R)」は、カシケンでも何度かご紹介していますので、ご承知の方も多いと思います。ドイツの研究機関Fraunhofer(フラウンホーファー)の技術を採用したLED通信システムで、三技協の本社屋上には実験用機器が設置されていました。200m先の装置にPCのIPアドレスを送って、通信状況を見ているとのことでした。
フラウンフォーファ技術の商品化は世界初
屋内では、4Kの画像を送る通信デモンストレーションが披露されました。
場所の関係で10数メートルの距離でのデモでしたが、実際は、200~300m程度の距離間を約500Mbpsで受送信されます。防犯カメラの映像の送信やイベント中継などWiFiの干渉を嫌うシーン、スタジアムや劇場における後付けのインフラなどの需要を期待しているとのことです。
向かって右側が送信、左側が受信を担い、1台で送受信ができます。左側がやや黒っぽく見えるのは、屋外での使用にも耐え得るよう太陽光をさえぎるためにハニカム型フィルターが装着されているためです。ただし、濃霧のように人の目にも視認性が悪い環境での使用は難しいとのこと。
光は赤外線(赤外波長は850nm)を使用しています。赤外線を使っている理由は、1つはバックホールとして使用する際に信号の光と間違えられるのを防ぐため、もう1つは屋外での性能を考えてのことで、色そのものに意味はないといいます。
レーザー光についてはどうか、という参加者からの質問に対しては、レーザーは焦点を合わせることがかなり難しくなることと、人体的な影響に問題があることから、実用化には不向きであると判断したとの回答がありました。
現在、このフラウンフォーファの技術は、ドイツBMWの工場で試験的に使用されています。三技協では「LED Backhaul(R)」システムを来年の6月に商品として発売する予定で、これは世界初のフラウンフォーファ技術の商品化となります。
参加されたネットワークや通信の専門家の皆様には、非常に興味深い見学会となり、その後の懇親会も含めて、活発な意見交換がなされていました。
若き三代目社長が率いる、株式会社三技協という会社が持つポテンシャルも含め、来年6月の商品リリースが待ち遠しいです。大変貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
なお本記事は、株式会社三技協様のご承諾により、特別に社内設備の写真撮影を許可されております。リンクでのご紹介は歓迎ですが、記事や写真の複製や転載はご遠慮いただきますよう、お願いいたします。
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