可視光通信技術のパイオニア カシオ計算機『Picalico(ピカリコ)』に迫る! カシオ計算機株式会社 インタビュー【Vol.2】
カシオ計算機ではカメラの応用研究として、可視光通信の概念が発表される数年前から、光を使った通信技術の開発を進めていました。スマートフォンの登場でいよいよ時代が追い付き、2012年に「Picapicamera(ピカピカメラ)」というアプリで先行リリース。その後、Picalico(ピカリコ)というブランドとして、幅広い分野への技術提供が始まりました。ここではPicalicoの概要と、カシオ計算機が考える可視光通信ビジネスについて伺います。
Picalicoの2大サービス
Picalicoは、弊社独自の、可視光を用いた情報送受信技術の総称です。簡単に言うと、人の目に見える色の変化を利用して情報を伝達し、それをカメラでとらえましょうという技術です。 発光側のハードウエアは、3色のLEDと8ビット程度のマイコンさえあればOKで、色の変化を表現できる機器、デバイスを活用することも可能です。受信側は、スマホやタブレットなどのカメラを内蔵する情報機器か、カメラが接続されたコンピュータ、あるいはビデオキャプチャや動画ファイル、ストリーミング動画からの受信も可能です。電波ではありませんから電波法への対応が不要なので、システムそのものを海外で利用することもできます。 この技術を使って、弊社ではすでに2つのサービスを提供しています。一つは、スマホ対応、コンシューマ向けの情報発信サービスの「Picalicoサービス」。もう一つは、通信技術そのものをライセンスとして提供する、エンタープライズ向けの「Picalicoライセンス」です。
「Picalicoサービス」では、無料の受信専用アプリ「Picapicamera」を2012年よりスタートさせ、イベントなどですでに多くの活用事例があります。 応用として、家電のサポート分野での活用が考えられます。たとえば、通常家電にはLEDがついていて、異常があると赤点滅しますよね。でも点滅したのは「なぜ?」というのは、しまい込んだ取り扱説明書を出してこないとわからないわけです。これをスマホとの連携で、異常→点滅→スマホで撮影→解決法の提示と、その場で確認できたら便利ですよね。テキスト表示、動画リンク、コールセンターへの発信、メールなど、スマホの機能はすべて使えますから、顧客の欲しい情報に直観的にアクセスできるようになります。サービスの一例として、お客様のスマホを利用して、家電の付加価値を上げられます。 もう一つの「Picalicoライセンス」は、パソコンとカメラで情報伝達をする技術をSDKとして提供。たとえば無線が使えない環境下でのワイヤレス通信など、カメラとLEDを利用した情報伝達のソリューションをご提案しています。たとえば、電波を飛ばせない生産現場で、監視カメラで機械のステイタス管理をする、温度センサーなどのデータ収集に使う、などの用途があります。
カシオ計算機が考える、可視光通信ビジネス
お客様はそれぞれ用途が異なります。手段は何であろうが、今ある問題、課題を解決したいのであって、「可視光通信」を求めているわけではありません。通信としての高速性を追求していたら気付かなかった、可視光通信ならではの特性を活かす場所は、お客様から教わったように思います。 光のすごいところはやはりレンズが使えることです。レンズを使うと、世の中の写像が一望にポンと撮れます。光はレンズを使って像を結びますが、これは電波では難しい部分です。さらに人の目に映る像と一致しています。レンズが使える可視光で、人間の目の感覚と一致したうえでの情報伝達をやる、それがカシオらしさであり弊社が提供する意味がある技術だと思っています。 通信として速度を追及していく方向とは異なりますので(いつかは高速になっていくとは思っていますが)、本流の可視光通信とは別物かもしれません。でもそれでよいと思っています。実際に、2015年3月のIEEE802.15.7r1では、高速化の提案が多い中、弊社では、低速変調も考えに入れてカメラを活用した可視光通信について提案しました。On Businessの強みも活かし、カメラでやるなら低速を標準の中に入れて早く市場を立ち上げよう、いずれカメラでも高速が実現できる日は来るのだから、と。どの会議でもホットな議論が交わされ、非常に盛り上がりました。 (飯塚氏・菊地氏 談)
最終回は、IoTや2020年の東京オリンピックに向けた取り組みについて、お話を伺います。
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