可視光通信協会(VLCA)春山会長に聞く【前編】
~可視光通信発展の未来に向けて~
2014年5月、一般社団法人 可視光通信協会が発足されました。今回は、可視光通信研究倶楽部(カシケン)の活動をご説明にあがりつつ、協会発足の経緯や協会が目指されていること、可視光通信の研究の「今」について、貴重なお話を伺ってまいりました。 (左:春山真一郎様 一般社団法人可視光通信協会会長・慶應義塾大学大学院教授・理学博士 右:鈴木修司様 一般社団法人可視光通信協会事務局長 中央:寿田龍人 カシケン運営・聞き手)
●可視光通信協会の成り立ちと目的
協会の発足は2014年5月ですが、そもそもは、2003年11月に可視光通信コンソーシアムを立ち上げたところからスタートしています。当初は、照明器具としてのLEDすらもまだ全然普及していない時代で、可視光とは何? という研究から始まりました。たくさんの企業が集まり、可視光の特性や応用、どう扱っていくかなど、いろいろ議論することができました。 コンソーシアムは、参加企業がどんどん増えて盛り上がったのですが、企業ですからどうやってビジネスにつなげるかが大きな課題となりました。実際に製品化、サービス化した場合、他の通信技術とどう差別化していくかという点で、明確な方向性が見出せなかったのです。 そこで、ビジネスとしてみんなで使える仕組みを作ろう、そのためには法人化する必要があるということで、今年の5月にコンソーシアムを発展解消、一般社団法人として可視光通信協会の活動をスタートさせました。
●可視光通信の特性 イメージセンサーに期待
可視光通信は可視光、つまり目に見える光を使った通信手段です。大きな可能性を秘め、研究が進められていますが、製品化やサービス化はまだこれからという段階。可視光通信特有の特徴があるので、それを活かすべきと考えています。 当初から追求してきたのが、LED照明をインフラとした通信です。世の中に圧倒的に広がるだろうと当時から予測し、実際その通りになってきていますが、こうしたユビキタスに使えるポテンシャルを活かしたいです。位置情報サービスはその一つですが、他の方法でもこうしたサービスはすでに提供されていますので、ここにもう一つ差別化できる付加価値が生まれればと思っています。 目に見える光を使えることも大きな特徴です。第一に人間の目で見えるから「気が付く」という特性、第二にカメラで写すことができるという特性、つまり、イメージセンサーを使った通信ができるのです。これは、無線LANやiBeacon、RFタグなどとはまったく違うサービスが出てくる可能性を秘めていると考えていて、期待しています。イメージセンサーを使った通信のアプローチは、まだまだ知られていない可能性の一つです。可視光通信協会では、広く認知拡大に努めていきたいと考えています。
●可視光通信の需要
通信というと、どうしても避けて通れないのが「高速化」の問題です。可視光通信の高速化に関しては、まずその方向性を明確化する必要がある、と我々は考えています。Wi-Fiをはじめとする他の通信技術に対抗できるだけの高速技術が、可視光で果たしてできるのかどうか、また可視光での高速化を求める需要がどのくらいあるのかなどが、まだ不明瞭だからです。ファイバーなどの既存技術を使えないような場所で、ギガbpsの転送をやりたい場面や需要があるのかが、見えてきていません。 例えば、かつては医療の現場や航空機内など、電磁波の問題やファイバーを引けない場での利用を想定していましたが、病室にしても飛行機にしても、すでに無線LANが解禁になっています。ただし、非常に精密な機械がある場所、手術室や検査室、精密機器を扱う工場やガラス一枚隔てて信号を送るところなどの、ニッチなニーズがあることは認識しています。 現状では、普及しているLEDなどの付加価値を高める側面もプッシュしていきたいですね。光って照明やランプ、信号機に使うだけではなく、データも送れるんですよ、という特徴が形になるのを目指しています。LEDが単なる「照明に使うモノ」以上の存在になることで、メーカにとってのメリットに結び付くことができればいいな、と思っています。(春山会長談) 後編では、可視光通信の世界的な研究事情と、今後の発展予測について、引き続きお話を伺います。
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