一つ一つの光が意味をもつ時代へ パナソニックの『光ID技術』 パナソニック 光ID技術開発者インタビュー【Vol.3】
新たな通信手段として注目されるパナソニックの「光ID技術」。2020年に先駆けて、すでにインバウンドのお客様を迎える施設での導入が始まるなど、様々なマーケットへの浸透に期待が高まります。Vol1.、Vol.2に続き、技術顧問の大嶋光昭氏へのインタビュー3回目では、活用シーンと2020年に向けての展望について伺います。
光にスマホをかざして情報をGET
光IDは、
・受信レスポンスが速い(ピント合わせ不要・0.3秒でIDを受信)
・混雑状況に強い(人混みでも光をキャッチできればOK)
・複数の発信光源の隣接が可能(指向性があり電波干渉がない)
・LED光源があれば様々な機器に対応(照明、看板、サイネージetc)
という特長がありますから、光を用いる場であればあらゆる展開が考えられます。マーケティングや交通・観光案内、エンタメ系などとは、特に親和性が高いでしょう。
たとえば、ファッションショーなどでモデルさんにQRコードを付けたい、なんて言ったら怒られますね。デザインが台無しだし、そもそもランウエイを歩いているモデルさんのQRコードなんて読み取れません。光IDの場合は、そのモデルさん固有の光IDを送信するスポットライトを照射すればいい、QRコードを身に着けるのと同じことを光IDでやれるわけです。こうすれば、デザインや見た目を全く変えないでモデルさんにIDを付与することができます。
中国に行くと地下鉄の看板にはQRコードが印刷してありますが、小さいため近くに行かないと情報がとれません。かといって、QRコードを大きくするとデザインを損ねてしまいます。光IDの場合は遠くからでも情報をとれて、レスポンスが早いですから、置き換わる可能性が高いと見ています。特にエンタメ系では、テーマパークの雰囲気を変えないことが要望されていますので、有望な市場だと思います。
2015年の末には、東京・銀座で「ヒカリで銀ぶら」※注1というイベントを仕掛けまして、2日間で約1,400人の方々に光IDを体験していただきました。2016年に入ってからは、東京ビッグサイトの施設案内サイネージや、スポーツ用品メーカーのオムニチャネル戦略などで、すでに運用を開始しています。
※注1
「光ID」技術を用いた世界初の体験イベント「ヒカリで銀ぶら」https://youtu.be/oCWMMzFEngM
キラーアプリの出現が鍵
このように光IDには、可能性も活用シーンもあります。そこにコンシューマを誘導するための文化や習慣付けが必要で、それにはキラーアプリの出現が重要です。
たとえばアップル社がとうとうiPhoneにFeliCa※注2を搭載して、日本でApple Payを本格的にスタートさせました。日本ではPASMOやSuicaが主要交通系をカバーしていて、読みとり機に端末やカードをタッチする文化が普及しているからです。この文化がないところで、普及から始めようとしたら大変です。起動方法から使い方まで、懇切丁寧に自社で啓蒙しなければなりません。Felicaを利用する文化が普及している日本から始めれば、次第に諸外国へも普及していきます。これと同じことが光IDにもいえます。最初のキラーアプリで数100万ユーザーを取ることが大事ですね。
プッシュ型かプル型かとよく問われますが、どちらもありです。でも、私はプルするくらいの内容じゃないと市場は立ち上がらないと考えます。プルするようなコンテンツを提供できなければ、ポケットやBagの中にスマートフォン(スマホ)を入れっぱなしで、ユーザに使っていただけませんから。
2020年には「スマホを光にかざせば情報が取れる」という文化が当たり前になっているよう、今、世界中でいろいろ仕掛けています。影響力のある誰かとのコラボ、圧倒的にインパクトの強い何か、さまざまな仕掛けのうち何が当たるかはこれからのお楽しみです。一つキラーアプリが見つかれば、「文化」が生まれ、普及すれば新たなアプリが生まれるという循環が始まります。そこまではこういったものは我慢です。継続しながら我慢して突破口が開くのを待ちます。
※注2 Felica(フェリカ)は、ソニーが開発した非接触型ICカードの技術方式、および同社の登録商標。かざすだけで高速データ送受信を可能にし、公共交通機関の乗車券システムから、電子マネー、マンションの鍵まで幅広い用途で使われている。
強い技術同士を組み合わせて展開できるパナソニックの総合力
展望はもちろんあります。しかし、突破口がエンタメ系なのか何なのかで、今後の戦略シナリオは変わります。何が来るかで打つ手の順番が変わっていく。パナソニックはいろいろな技術をやっていますから、一つだけで売るという形はとりません。当然ですが、パナソニックが強い技術と光IDをセットで展開する方がよいでしょう。インバウンド関連では翻訳がうまくいっているところに光IDを入れたら使い勝手がもっと良くなるだろうし、他の分野でも電波の干渉を嫌うところでの活用は進むでしょう。半導体から照明からすべて自社で調達できますしね。いろいろな技術と組み合わせ、ある程度まとまった形で提供するのが良いだろうと思います。展示会でも、単体でのデモンストレーションではなく、統一テーマで他の技術も含めてのソリューション提示をした方が理解を促しやすいようです。
可視光通信単独で勝負しようとしても、すでにいろいろな技術や製品が出ていますよね? パナソニックは総合力でシステム的に売っていく。そうすると付加価値も高いのです。点で勝負するのではなくて点が線になり、それが先には面になるというビジョンです。大きな形で広げていけば、リターンも大きくなります。そうすればまた新たな投資ができます。
勝負にはやはり資金が必要です。次のビジョンに向けて進むには、できるだけ早い時期に成果を上げて、リターンを得ること。LinkRayを発表して、多彩な分野で次々と事業に採用していただいていますが、一方でキラーアプリの登場にも期待をしています。先程は「突破口が開くまでは我慢」と言いましたが、ますます進化のスピードが速まっている世の中ですから、そうそうのんびり構えているわけにはいきません。そう遠くないタイミングで、突破口が開けると思っています。(大嶋氏談)
突破口を開くためのキラーアプリの出現のために、世界中でいろいろ仕掛け中・・・それがいつどんな形で私たちの前に登場するのでしょうか。とても楽しみです。そして、2020年までには看板やサイネージなどの光に「意味」があることが当たり前となり、様々なシーンで光にスマホをかざす姿が一般的になるイメージが高まりました。パナソニックの技術顧問、大嶋氏へのインタビューはさらに続きます。
・「光ID」技術について、パナソニック株式会社は日本とその他の国において特許を保有しています。
・「LinkRay」および「LinkRay」アイコンは、パナソニック株式会社の商標です。
・その他、記載の会社名および製品名は、一般に各社の商標または登録商標です。
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