公開日: 最終更新日:2021/03/27

LED通信技術白書2

前回は光通信の成り立ちにつてでした。「1」 現在は光に関して「規制がない」こと、これは電波では絶対に実現できない、極めて大きなメリットです。

今回は「光無線通信の種類」につての話です。光を使った通信の可能性が三技協のLED Backhaul以外にもある事をまとめています。

光無線通信の種類

 

4つの光無線通信

光無線通信はリモコンやマイクのようなものから、衛星と通信するものまで様々な種類があります。その中でデジタル通信(言わばIP通信)することを目的とした光無線通信はおおよそ4つに分類することができます。本章ではその4つの光無線通信の用途や技術の違い、最近の動向について説明いたします。

 

4つの光無線通信は次の通りです。

バックホール型

– 1対1か1対少数の通信

– おもに地面に対し水平方向の通信

– 高速通信

Li-Fi型

– 1対多数の通信

– 照明などが通信装置になる

– 高速通信

光ID型

– インジケーターLEDなど通信目的でないものと通信

– 受信側はカメラ

– 低速通信

FSO型

– 地上と衛星、衛星間など宇宙を含めた通信

– レーザーを使った通信

– 中速通信

 

 

バックホール型

– 1対1か1対少数の通信

– おもに地面に対し水平方向の通信

– 高速通信

製品例

三技協 LED Backhaul(R)

概要

バックホールとは、厳密に言えばユーザーに繋がる末端の回線と基幹通信網を繋ぐ回線のことを指しますが、ここではもう少し広い意味のバックホールとして、2つのネットワーク間を結ぶ回線の事を指しています。2点間を結ぶため、機器構成としては2台一組の1対1(Point to Point)通信であることが殆どあり、そのため、多くは地面に対し水平に通信することとなります。

携帯電話基地局、Wi-FiのAP(アクセスポイント)とインターネット回線を結ぶバックホールや、監視カメラ、遠隔操作など機器間を繋ぐバックホールとしての用途で使われます。また、IrDAのようなごく短い機器間の通信や、水中の通信などもバックホール型として分類されます。

図1

図2

技術要素

バックホールはその用途から、できるだけ高速な通信が求められ、そのためには、光の信号に対して高い強度(とSN比)が必要となります。光は電波と同じ性質のため、電波と同じように距離の二乗に比例して減衰します。この大きな減衰をカバーするため、電波ではアンテナ(空中線)を使用し、指向性を上げることで利得を稼ぎます。光においてもおなじですが、光におけるアンテナの役割はレンズが果たします。直進性の高い光は、電波よりも格段に指向性を上げやすい性質があります。バックホール型の光無線通信機は、レンズによって利得を上げることで、高速・長距離を実現します。レンズの利得は、焦点距離(レンズと受光素子)の距離が長いほど指向性が高くなるため利得が上がり、また、レンズが大きいほど受光面積が増えるため利得が上がります。これは、カメラの望遠レンズとおなじ事で、長距離、高速の通信を目指すほど機器サイズが大きくなる傾向にあります。

一部のFA、IoT用途向けのものには一方向通信のものがありますが、近年はあらゆるものがIP通信となってきているため、双方向通信(二重通信)であることが多くなっています。双方向通信タイプは、現在、WANの分類となるIEEE802.15.13という規格で標準化が進められています。

 

 Li-Fi型

– 1対多数の通信

– 照明などが通信装置になる

– 高速通信

製品例

Oledcomm [Li-Fi MAX]

[pureLi-Fi]

概要

Li-Fiという単語は、英国エジンバラ大学のハース教授が2011年のTEDにて提唱した[1 ]のが始まりといわれています。照明のWi-Fi、すなわちLight Wi-Fiを略してLi-Fi(ライファイ)[ 2 ]と命名しました。その語源の通り、照明機器のように天井から光を照射して、その光の範囲内でWi-Fiの様に光無線通信が行えるというものです。当初は、照明器具の照明光(白色光)に載せて通信する機器のことをLi-Fiと呼んでおりましたが、現在は照明光で通信しない(赤外線や紫外線で通信する)ものもLi-Fiと呼んでいます。用途的に天井、又は壁面高い場所と机や人の高さとの通信になるため、地面と垂直方向の通信となります。バックホール型との違いは、1対多数、および通信方向(水平・垂直)という部分です。

尚、前述のハース教授は[pureLi-Fi]という会社を立ち上げ、現在もLi-Fi技術をリードしています。

図3

技術要素

Li-Fiは、一定のモビリティを確保する必要があるため、ある程度光を広げる必要があります。その一方で、LED照明として成立する程度の距離をカバーすれば良いため、必要な通信距離は最大でも5m程度です。光の範囲を広げるために、Li-FiはLED照明と同じようにLEDを複数個使うことが多いようです。光無線通信にEIRP(等価等方輻射電力)制限はありませんので、LEDを何個使おうが自由だからです。

地面に垂直に通信すると言うことで、屋外で通信する場合は太陽光が最大の干渉源となります。残念ながら、現状では太陽光を画期的に防ぐ方法は無く、それ故Li-Fiは屋内での使用が前提となります。

Li-Fiは照明型であるため白色光で通信するのが望ましいです。しかし、かつてのLED照明は青色LEDを黄色蛍光体に当てるだけの擬似的な白色光でしたが、最近のLED照明は自然な白色光を再現するために複数の蛍光体やLEDによる繊細な調光を行っています。LEDの照明としての性能と、点滅を含む通信としての性能を両立する、すなわち、色彩を保った上で高速通信を行うことは難しくなりました。そのため、照明機能は有せず、赤外線や紫外線など不可視光を使って通信するLi-Fi装置も増えてきています。

Li-Fiは1対Nの通信を前提とするため、(光通信技術そのものとは別に)マルチアクセス性能やハンドオーバーといったモビリティ性能も求められます。それら機能も含めWi-Fiの接続プロトコルに合わせるべく、現在はIEEE802.11bbという規格で標準化が進められています。

 

光ID型

– インジケーターLEDなど通信目的でないものと通信

– 受信側はカメラ

– 低速通信

製品例

パナソニック [LinkLay]

カシオ計算機 [Picalico]

アウトスタンディングテクノロジー「Lpis]

概要

現在、至る所で使われているLEDですが、別の用途で使われているLEDの光に信号を載せて、それをスマートフォンなどのカメラで撮影することで信号を受信するというのが光ID型です。カメラで受信するだけなので通信速度は速くありません。例えば、エアコンのLEDインジケーターの点滅に信号を載せ、様々な情報をスマートフォンに渡す、ビルの制御盤にあるLED動作ランプに信号を載せ、スマートフォンをかざすだけで機器の情報を取れる、デジタルサイネージで使われる液晶モニターのLEDバックライトに信号を載せ、デジタルサイネージにスマートフォンをかざすと情報を取れる、といった使い方がされています。通信できる距離や速度は異なりますが、現在は「QRコード」的な使い方をされていることが多いです。

図4

技術要素

LEDの点滅や色の変化をカメラで取得し、それを信号に置き換えます。受信側がカメラのため、通信は一方向だけです。また、カメラの受信速度は、バックホール型やLi-Fiの受信で使われているフォトダイオードと比べるとかなり遅いです。それは、フォトダイオードが単にエネルギーを取得するだけの「単一素子」であるのに対し、カメラは数千万、数億のフォトダイオード素子により「画像の取得」をする装置だからです。光ID方式は、カメラのfpsがそのまま通信速度の上限を決める(標本化定理)ため、通信速度は最大でも数百bpsと低速で、通信と言うよりは文字情報やWebアドレスのような僅かな情報だけを提供することに向いています。

 

FSO (Free Space Optics) 型

– 地上と衛星、衛星間など宇宙を含めた通信

– レーザーを使った通信

– 中速通信

実例

NICTによる国際宇宙ステーションとの[通信実験]

概要

FSOの単語の意味は光無線通信全体の事を指しますが、現在FSOというと、地上と衛星間、衛星と衛星間のレーザーによる通信を指すことが殆どです。

近年、超小型衛星などの影響で衛星数が爆発的に増えてきた影響で、衛星が使える周波数は不足の一途を辿っています。衛星が使う電波は国際的な取り決めの上割り当てられるため、他の電波と比べてもステークホルダーが多く、割当帯域を増やすは困難を極めます。そういった事情もあり、自由に使える光無線通信のニーズは、衛星の数が増えるのと同じく劇的に増えています。

図5

技術要素

バックホール型よりも、更に長距離の通信が必要とされるため、FSOにはレーザーが使用されます。レーザーはLEDなどの自然放出(Spontaneous emission)による光と異なり、波長、位相が揃ったコヒーレント光と呼ばれる光のため、光を拡散させずに長距離飛ばすことができます。また、レーザーはその発光の仕組みからLEDよりも点滅を高速にでき、通信を高速に行うことができます。ただし、非常に狭い範囲しか光が飛ばず、高精度のレンズや方向調整機器が必要で、レーザー発振器そのものも高価なため、衛星通信のような高精度だが高価が許される通信に用いられます。

地上と衛星の通信においては、距離が長い分、変調などの通信方式よりも、大気中の散乱・減衰・屈折の変化のほうが影響が大きくなります。特に、雲が出ると通信ができなくなってしまうことから、それを回避する方法(例えば複数の地上局を用意する等)も必要となります。

 

 

[1]:Harald Haas TEDGlobal 2011 : [Wireless data from every light bulb][3]

[2]:Wi-Fiの語源の「Wireless Fidelity」から、Li-Fiは「Light Fidelity」の略が正式。

 

 

 

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